● 逆子治療に関する考察 (当院研修会資料より抜粋) ●
●逆子とは
妊婦の胎内における胎児の胎位と胎勢は、分娩経過に大きな影響を及ぼします。
胎児は妊娠の早い時期から子宮の中で自己回転しており、妊娠28週くらいになると頭を下に向ける頭位(正常位)に安定するようになります。
これに対して、母体を縦軸として胎児の骨盤端が下方にあるものを「骨盤位」、母児の軸が直行するものを「横位」、交差が直角でないものを「斜位」と言います。
これら頭位(正常位)でない場合を総称したものが「逆子」と呼ばれる状態です。
28週の時点で逆子の状態であるケースは約30%、最終的な分娩時に逆子であるケースは約3〜5%と言われています。
●手術のリスク
逆子の状態での分娩は、母体の軟産道の裂傷や新生児仮死、児の分娩外傷などリスクが多いため、帝王切開術が主流となっています。
近年安全に行われるようになったとはいえ、母体にとっては侵襲的な方法であり、初産婦に対する帝王切開は、次回の妊娠における帝王切開術率の上昇といった新たな問題を生じさせています。
●鍼灸による逆子治療
鍼灸治療は母児へのリスクが少なく、母体の健康管理としても期待できるものです。古くからもの文献にも登場するようです。
『医綱本紀』 〜分娩横生手を出すを治する法〜 右脚小指尖頭の上に灸する三壮
『和漢三才図会』〜至陰 右小指の尖、三壮灸して立ちどころに平産す。〜
以後、「逆子治療」というより「難産治療」として使われていました。
1950年に東洋医学を学んだ産婦人科医の石野信安が、それまで妊娠中禁忌とされた三陰交に灸をして80%の回転率を報告しました。
その後1988年に、林田和郎(はやしだ産婦人科医院院長)が難産の灸治療法を応用して、至陰の灸と三陰交の灸頭鍼を行い、584例の逆子鍼灸治療で89.9%の回転率であったことを報告しました。
90年代より論文が急増しています。
●鍼灸治療による逆子治療のメカニズム
下腹部の血流状態、とくに子宮の血流状態の改善が子宮筋の緊張を緩和し、その結果、子宮収縮が増加したり、胎動が増加したりして、自己回転を起こしやすくしていると推察されます。
また、ラット実験による報告では、仙髄支配領域の皮膚への機械的感覚刺激が副交感神経を介して分節性の脊髄反射を惹起して、子宮の血流と運動を調節しているという考察も発表されています。
鍼灸治療は、体表への刺激が間接的に何らかの刺激伝導路を介して内臓に及ぶものであり、それが体性‐自律神経反射と考えられています。
逆子治療における有効性のメカニズムもまた、このように脊髄性の自律神経反射によると考える研究者が多いようです。
|